賃貸管理コラム
2025/11/27
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【生活保護受給者の入居はリスクか、安定収益か?】円滑な賃貸経営の秘訣
姫路市における生活保護受給者の賃貸市場
「生活保護受給者は入居者としてどうなのか?」という疑問をお持ちではないでしょうか。
かつては「トラブルが多い」「家賃滞納のリスクがある」といったネガティブなイメージが先行していたかもしれません。しかし、現在の生活保護制度(特に住宅扶助)を正しく理解すれば、受給者はむしろ安定した家賃収入が期待できる、優良なターゲット層になり得ます。
特に姫路市内では、高齢化や単身世帯の増加に伴い、住宅を必要とする生活保護受給者のニーズは高まっています。この層を積極的に受け入れることは、空室対策の大きな柱となり得ます。
本記事では、生活保護受給者が引っ越しを行う際の制度の仕組み、オーナー様にとってのメリットとリスク、そして姫路市で安定した賃貸経営を行うための具体的なポイントを解説します。
生活保護受給者の「引っ越し」は制度上どうなっている?
まず、大前提として、生活保護受給者であっても引っ越しは可能です。ただし、一般の入居者とは異なり、「福祉事務所の許可」が必須となります。
1. 引っ越しにはケースワーカーの許可が必須
生活保護受給者が引っ越しを検討する際、必ず担当のケースワーカーに相談し、その理由が妥当であることの許可を得る必要があります。オーナー様が知っておくべきなのは、この「許可」が、次の「引っ越し費用の支給」と直結しているという点です。
2. オーナー様へ直接支払われる「住宅扶助」
生活保護費のうち、家賃に充てられる費用は「住宅扶助」として支給されます。
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家賃の確実な支払い: 住宅扶助の多くは、受給者本人に渡さず、福祉事務所からオーナー様(または管理会社)へ直接振り込まれる「代理納付」の形式が取られます。これは、オーナー様にとって最大のメリットであり、家賃滞納のリスクが極めて低いことを意味します。
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姫路市の住宅扶助上限額: 住宅扶助には、世帯人数や地域(級地区分)に応じて上限額が定められています。姫路市は多くの地域が「3級地」に該当する場合が多く、単身世帯の上限額はおおよそ8,000円〜35,000円程度(世帯人数に応じて変動)です。
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【重要】 オーナー様は、募集物件の家賃がこの上限額を超えていないかを事前に確認する必要があります。超える場合、超過分は受給者の自己負担となりますが、生活保護費からの捻出は困難なため、事実上、入居のハードルが上がります。
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オーナー様必見!初期費用・引っ越し費用支給の仕組み
オーナー様が物件を提供する際、最も気になるのが「初期費用が支払われるか」という点でしょう。生活保護受給者が「行政から許可を得て引っ越しを行う場合」、初期費用は「住宅扶助(一時扶助)」として支給されます。これはオーナー様にとって、初期費用回収のリスクがないことを意味します。
支給される初期費用の内訳

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支給上限: これらの初期費用は合算され、原則として住宅扶助上限額の3.9倍以内で支給されます。
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支払い方法: 費用は、受給者本人に渡されず、福祉事務所から直接、オーナー様や不動産会社(仲介業者)に振り込まれるケースが一般的です。
オーナー様が注意すべき「支給されない費用」
退去時の「原状回復費」は、転居費用として支給されません。
経年劣化を超える入居者の故意・過失による損耗(傷や汚れ)があった場合、その修繕費は受給者本人に請求することになりますが、生活費から捻出することは現実的に困難です。
【対策】 入居前の現状を細かく記録し、契約書に原状回復に関する特約を明記するなど、トラブルを未然に防ぐ対策がより重要になります。
オーナー様にとってのメリットとリスク(Q&A形式)
生活保護受給者を受け入れることは、姫路市の賃貸経営においてどのような影響をもたらすでしょうか。
オーナー様にとっての3つの大きなメリット
1. 家賃滞納リスクのほぼ解消
家賃は福祉事務所から直接支払われる(代理納付)ため、入居者都合による滞納は極めて低い確率となります。これは、家賃保証会社に頼る一般の入居者よりも、ある意味で確実性の高い収入源と言えます。
2. 空室対策・入居率の向上
生活保護受給者は、高齢者や単身者を中心に、住宅探しに苦労するケースが多く、一度入居が決まると長期入居の傾向が強いです。この層のニーズを取り込むことで、長期の空室を解消し、安定した入居率を維持できます。
3. 継続的な入居ニーズ
日本の社会保障制度として生活保護制度が存在する限り、この層の住宅ニーズは継続します。特定の属性の入居者(例:高齢者、外国人)と同様に、新たな市場を確保できます。
オーナー様が理解しておくべきリスクと対策

姫路の賃貸オーナー様が成功するための4つの秘訣
姫路市で生活保護受給者を積極的に受け入れ、円滑な賃貸経営を行うためには、以下のステップが非常に有効です。
秘訣1:姫路市の福祉事務所との連携を強化する
最も重要なのは、地域の福祉事務所と良好な関係を築くことです。
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連絡先の把握: 姫路市の福祉事務所(市役所、各支所など)の担当部署の連絡先を把握し、入居者に関する懸念事項を相談できる体制を整えましょう。
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代理納付の手続き: 家賃の代理納付を確実に依頼し、手続きに必要な書類を迅速に提出しましょう。これにより、家賃収入の確実性が格段に向上します。
秘訣2:住宅扶助の「上限額」に合わせた家賃設定
前述の通り、生活保護受給者が入居できるのは、家賃が住宅扶助の上限額に収まる物件が基本です。
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相場調査: 姫路市内の地域ごとの世帯別(単身・二人世帯など)の住宅扶助上限額を管理会社を通じて確認し、その上限額内に収まる家賃設定をすることが、募集成功の鍵となります。
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低額帯の物件の価値向上: 他の層には魅力が薄いとされる築古の低額帯物件が、この層にはマッチし、稼働率を大幅に改善できる可能性があります。
秘訣3:契約・重要事項説明をより丁寧に
生活保護受給者は、制度や契約に関する知識が不十分なケースもあります。
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契約内容の確認: 契約書や重要事項説明書の内容(特にゴミ出しルールや騒音規定など)を、管理会社からより丁寧かつわかりやすく説明してもらいましょう。
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福祉事務所の同席: 可能であれば、入居手続きの際にケースワーカーに同席してもらい、生活上のルールや費用負担について確認してもらうことも有効です。
秘訣4:退去費用に関するトラブル対策
退去時の原状回復費用の未回収を防ぐため、以下の対策を徹底しましょう。
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入居前後の記録: 居室内の写真を隅々まで撮影し、入居者本人と状態を確認し合う記録を残します。
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保証会社の活用: 一部の家賃保証会社は生活保護受給者を受け入れており、退去時の原状回復費用の一部を保証するプランを提供している場合があります。利用を検討しましょう。
まとめ:安定経営の選択肢として生活保護受給者を
姫路市の賃貸オーナー様にとって、生活保護受給者の受け入れは、「家賃の確実な回収」という大きなメリットと、「生活上のサポート」という少しの手間を交換する、安定収益型の経営戦略となり得ます。
重要なのは、「制度の仕組み」と「地域の福祉事務所」を味方につけることです。
生活保護受給者への賃貸提供は、社会貢献にも繋がり、結果としてオーナー様の物件の空室リスクを大きく低減します。この安定したニーズを、ぜひ賃貸経営の新たな柱としてご検討ください。