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賃貸管理コラム

2025/08/19

トラブル 知識

知っておきたい高齢者入居のリスクと、それをチャンスに変えるための対策

少子高齢化が進む現代において、高齢者の方からの入居申し込みが増えていると感じている方も多いのではないでしょうか。

「高齢者の入居は、何かとトラブルが多いのではないか…」「家賃の滞納や孤独死が心配…」といった不安から、入居をためらってしまう気持ちもよく理解できます。しかし、実はこの高齢者入居は、適切な対策を講じることで、安定した収益を生み出す大きなチャンスにもなり得ます。

今回は、高齢者入居に際してオーナー様が抱えがちなリスクと、その対策について詳しく解説し、皆様の賃貸経営の一助となるような情報をお届けします。


 

1. 高齢者入居がもたらす「リスク」を正しく理解する

 

まず、私たちが漠然と抱いている「不安」を具体的に見ていきましょう。リスクの存在を正しく認識することが、効果的な対策の第一歩となります。

1.1. 賃料滞納リスク

高齢者の方は、年金収入が主な生活費源となることが多く、予期せぬ医療費の発生などにより、家賃の支払いが困難になるケースが考えられます。また、認知機能の低下によって家賃の支払いを忘れてしまうといった可能性もゼロではありません。

1.2. 孤独死リスク

これは、高齢者入居を躊躇する最大の理由かもしれません。万が一、入居者が室内で亡くなり、発見が遅れた場合、原状回復費用や風評被害による空室リスクなど、様々な損失が発生します。特殊清掃やリフォームには高額な費用がかかるうえ、その後の入居者募集にも影響が出る可能性があります。

1.3. 室内事故リスク

高齢者は、身体機能の低下から転倒や転落といった事故を起こしやすい傾向があります。火の不始末による火災や、水回りのトラブルなど、思わぬ事故によって物件に損害が出る可能性も否定できません。

1.4. 退去時の原状回復リスク

高齢になるにつれて、物を溜め込む傾向が見られる方もいらっしゃいます。ゴミ屋敷化してしまったり、壁や床を傷つけてしまうなど、退去時に大規模な原状回復が必要になるケースがあります。また、高齢で体力がないため、自力での清掃や荷物の搬出が難しいこともあり、オーナー様やご家族が対応に追われることもあります。

1.5. コミュニケーションリスク

認知機能の低下によって、近隣住民との間でトラブルが発生したり、生活音に対する配慮が難しくなったりするケースも考えられます。また、体調不良などの緊急時に連絡が取れなくなってしまうと、安否確認が困難になるというリスクも存在します。


 

2. リスクを軽減し、安定経営へと繋げるための「対策」

 

これらのリスクを正しく理解した上で、次に具体的にどのような対策を講じるべきかを見ていきましょう。これらの対策は、リスク回避だけでなく、高齢者の方に安心して長く住んでいただくための「おもてなし」にも繋がります。

2.1. 賃料滞納対策

  • 保証会社の利用を必須とする: 賃料滞納リスクを最も効果的に回避できるのが、家賃保証会社の利用です。高齢者の場合、保証人を見つけるのが難しいケースも多いため、保証会社を利用することで入居のハードルを下げつつ、オーナー様の未収リスクをゼロにできます。
  • 年金支給日を考慮した家賃設定: 家賃の引き落とし日を年金支給日の直後に設定することで、滞納を未然に防ぎやすくなります。
  • 後見人や成年後見制度の確認: 認知機能の低下が懸念される場合は、ご家族に後見人がいるか、または成年後見制度の利用を検討しているかを確認することも重要です。

2.2. 孤独死・室内事故対策

  • 見守りサービスの導入: 賃貸物件に特化した安否確認サービスや、高齢者向け見守りサービスを提供している企業があります。見守りセンサーを設置することで、一定時間動きがない場合に管理会社や家族に通知が届く仕組みは、孤独死の早期発見に非常に有効です。
  • 定期的な連絡や訪問: 管理会社やオーナー様が定期的に連絡を取ったり、何か困っていることはないか確認したりすることで、コミュニケーションを密にし、異変に気づきやすくなります。
  • 緊急連絡先の確認: 複数名の緊急連絡先(親族、ケアマネージャーなど)を事前に確認し、有事の際にすぐ連絡が取れる体制を整えておくことが不可欠です。

2.3. 物件改修によるリスク低減

  • バリアフリー化の推進: 手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更など、バリアフリー化を進めることで、転倒事故のリスクを大幅に減らすことができます。
  • ガスコンロのIH化: 火の不始末による火災リスクを軽減するために、ガスコンロをIHクッキングヒーターに切り替えることも有効な対策です。
  • 照明器具の自動点灯化: 人感センサー付きの照明を玄関や廊下に設置することで、夜間の転倒リスクを低減できます。

2.4. 契約時の工夫

  • 賃貸借契約書の特約: 契約書に「見守りサービスへの加入を義務付ける」「緊急時の室内立ち入りを許可する」といった特約条項を設けることも有効です。ただし、特約の有効性については、事前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
  • 連帯保証人の確保: 可能であれば、連帯保証人としてお子様などの親族を立てていただくことで、賃料滞納や原状回復に関するトラブルの際に、円滑な解決を図りやすくなります。

 

3. 高齢者入居を「チャンス」に変えるために

 

これらの対策を講じることで、高齢者の入居に対する不安は大きく軽減されます。さらに、高齢者を受け入れることは、以下のようなメリットにも繋がります。

  • 安定した長期入居: 高齢者は転居を好まない傾向があり、一度気に入ると長く住んでくれる可能性が高いです。退去が少ないため、空室期間が短縮され、安定した家賃収入を見込めます。
  • 入居者層の多様化: 高齢者を受け入れることで、入居者層が広がり、物件の魅力を高めることができます。
  • 社会貢献: 高齢者の住まい探しは非常に困難なのが現状です。オーナー様が高齢者の方に安心して住める場所を提供することは、社会貢献にも繋がります。

高齢者入居のリスクをただの「不安」で終わらせるのではなく、きちんと向き合い、適切な対策を講じることで、賃貸経営の新たな可能性が広がります。

皆様の物件が高齢者の方にとっての「安心できる住まい」となり、同時にオーナー様の安定した賃貸経営に繋がることを願っています。


(注) 本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。具体的な対策を検討される際は、不動産管理会社や弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。