賃貸管理コラム
2024/10/14
クレーム 知識 賃貸物件
孤独死が増加中、今すぐ取るべきリスク回避策とは?
孤独死数、年8.7万人の衝撃 オーナーが今すぐ取るべきリスク回避策とは?
近年、日本社会は急速に高齢化が進み、それに伴い「孤独死(孤立死)」という深刻な問題がクローズアップされています。厚生労働省の調査によると、2023年時点で孤独死により亡くなった方の数は年間約8.7万人。そのうち65歳以上の高齢者が約6.8万人を占めており、65歳未満でも1.9万人に上っています。単身世帯の増加や地域社会のつながりの希薄化を背景に、孤独死は今や誰にでも起こりうる身近な問題となっています。
この状況は、賃貸住宅を所有・運営する不動産オーナーや管理会社にとっても、無視できないリスクをもたらしています。孤独死が発生した物件は、原状回復や特殊清掃の必要が生じるほか、「事故物件」として告知義務が発生し、次の入居者募集に苦戦するケースが増えています。具体的な損失額について考えてみましょう。
例えば、姫路市内の家賃7万円の2LDK物件で孤独死が発生し、告知義務の影響で半年間空室となった場合、家賃収入の損失だけで48万円に達します。これに特殊清掃・消臭・原状回復工事費として約20〜50万円、心理的瑕疵物件となることによる賃料値下げの可能性まで加わると、トータル損失額は100万円を超える場合もあります。孤独死保険に未加入の場合、これらの費用はすべてオーナー負担となり、賃貸経営の収支計画を大きく狂わせる要因となりかねません。
孤独死のリスクが拡大する中、オーナー側に求められるのは「明日起こるかもしれない」という危機意識と、それに備えるための事前対策です。具体策として以下のものが考えられます。
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見守りサービスの導入
高齢者単身世帯向けにセンサー型見守りシステムや定期連絡サービスを導入することで、異変を早期に察知し、最悪の事態を防ぐことができます。最近では家電連動型の見守り機器も普及しており、月数千円程度から導入可能です。 -
孤独死保険(家主向け賠償責任保険)の加入
孤独死が発生した場合の原状回復費用や空室損失を補償する保険商品が各保険会社から販売されています。これにより、万一の場合でもオーナーの経済的負担を大幅に軽減することができます。 -
高齢者入居者への積極的フォロー体制の構築
入居時のライフスタイル確認や、定期的な電話連絡、管理人による声かけなど、普段からのコミュニケーション強化が孤独死リスクの低下につながります。また、保証人や後見人制度の活用も有効です。 -
契約時のリスク説明と同意取得
新規入居時に孤独死リスクや見守りサービス利用の必要性を丁寧に説明し、入居者の理解と同意を得ることで、トラブル防止にもつながります。
これらの対策を講じることで、孤独死のリスクをゼロにはできなくとも、限りなく軽減することは可能です。また、リスク管理が進んでいる物件は、入居希望者にも「安心できる住環境」として評価されやすくなり、空室率低下や長期入居につながるメリットも生まれます。
一方で、孤独死は決して高齢者だけの問題ではない点にも注意が必要です。現役世代の単身者でも突然死や自殺などによって孤独死が発生するケースがあります。こうした背景から、単身入居者全体を対象とした総合的なリスク管理の視点が、今後ますます重要になるでしょう。
孤独死リスクへの無策は、物件の資産価値の低下、長期空室化、家賃収入減といった深刻な結果を招く恐れがあります。だからこそ「まだうちには関係ない」と考えるのではなく、「いつ自分の物件で起こってもおかしくない」という前提で備えることが、不動産経営の安定につながるのです。
【まとめ】
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年間8.7万人が孤独死、その多くが高齢者
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孤独死発生時、家賃損失+原状回復費用=100万円超のケースも
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見守りサービス、孤独死保険の導入が急務
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高齢者以外の単身世帯にもリスクあり
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「発生してからでは遅い」事前準備が重要